16 印鑑証明書の期限と原本還付
印鑑証明書の期限と原本還付
今回は登記に必要な印鑑証明書の期限と原本還付について記述します。なお、会社・法人の印鑑証明書は、会社法人等番号を提供することにより省略できるので、本稿では自然人のそれに関してのみ説明します。
まず、期限の話ですが、これは申請する登記の添付情報の種類によって異なります。3ケ月の期限が要求される申請もあれば、期限を問わない申請もあります。主なものとして、前者は、①所有権の登記名義人が登記義務者になる権利に関する登記の申請(例外あり)及び②所有権以外の権利の登記名義人が、登記識別情報、登記済証が提供できない場合の登記の申請です。後者は、③登記原因につき第三者の同意、承諾が必要な際のその同意、承諾を証する情報を提供して行う登記の申請、④これら以外のその他の登記の申請になります。相続登記に必要な印鑑証明書は、④になります。
次に、印鑑証明書の原本還付についてです。原本還付とは、印鑑証明書などの登記申請時の添付情報の原本を後で返却してもらうことです。そのためには、原本と謄本(写し)を一緒に提出する必要があり、その謄本(写し)には原本と相違ない旨を書きます。添付情報としての印鑑証明書を原本還付できる登記の申請は、上記の④のみです。具体的には、相続を証する情報の一部、上申書の一部、表題登記の所有権を証する情報の一部、として提供し、登記を申請する場合です。
次に、これらに関連して、間違いやすい点について書きます。資格者代理人の司法書士が、登記義務者の本人確認情報を提供した場合において、その者の印鑑証明書が必要か否かです。登記義務者が所有権の登記名義人ならば、もともと提供されるので、問題になりませんが(後述の例外はあります)、登記義務者がそれ以外ならば、どうでしょうか。答えは必要です。本人確認情報を提供した場合としない場合(事前通知となる場合)に差はなく、どちらも登記識別情報が提供されないわけですから、不動産登記規則により、登記義務者の印鑑証明書の提供は必須となります。では、所有権の登記名義人が登記義務者となる「抵当権の債務者に関する変更」の登記申請で、登記識別情報が提供できず、本人確認情報を提供した場合、登記義務者の印鑑証明書は必要なのでしょうか。答えは、必要です。本来、この登記申請に限り、所有権の登記名義人が登記義務者であろうとも、例外的に印鑑証明書の提供は不要です。不動産登記規則に規定されています。ただし、登記識別情報を提供できない場合には、同規則を根拠に、印鑑証明書を提供しなければなりません。先のケースと同様に、本人確認情報の提供があったとしても、これをもって印鑑証明書の提供を省略できる根拠にはならないということです。
以上、登記申請に必要な印鑑証明書について、(かなり専門的にはなりましたが)記述しました。何かの参考にしてもらえれば幸いです。
